【勉さんのちょっといい話】ジャスト・イン・タイムは中小零細企業を苦しめる?

自働化と並んで、トヨタ生産方式の柱となるのが、ジャスト・イン・タイム(Just In Time:JIT)です。
製造業では良く使われる言葉であり、またとても心地いい言葉かのように使われておりますが...

ちょっと待ってください。
行き過ぎたジャスト・イン・タイムは、私には大企業の利己主義的な考え方に思えてしまうのですよ。

今回は、そのあたりを掘り下げてみましょうか。

ジャスト・イン・タイムのおさらいをします。

 

-必要なものを、必要なときに必要な量だけ造る!-

生産現場の「ムダ・ムラ・ムリ」を徹底的になくし、良いものだけを効率良く造る。
お客様にご注文いただいたクルマを、より早くお届けするために、次の内容により最も短い時間で効率的に造ります。

 

  1. お客様からクルマの注文を受けたら、なるべく早く自動車生産ラインの先頭に生産指示を出す。
  2. 組立ラインは、どんな注文がきても造れるように、全ての種類の部品を少しずつ取りそろえておく。
  3. 組立ラインは、使用した部品を使用した分だけ、その部品を造る工程(前工程)に引き取りに行く。
  4. 前工程では、全ての種類の部品を少しずつ取りそろえておき、後工程に引取られた分だけ生産する。

 

出典:トヨタWebサイト 
http://www.toyota.co.jp/jpn/company/vision/production_system/

 

ジャスト・イン・タイムの特徴は、製造工程における仕掛在庫の最小化を目指すものであり、作り過ぎの無駄にフォーカスしているところです。
ところがこれが行き過ぎると、世の中、不都合があちらこちらに出てしまいます。

例えば、東日本大震災の時は、どうでしたか?
被災地に生産拠点を持つ部品(部材)メーカーは、震災の影響で軒並み生産がストップ。完成製品生産に支障が出ましたよね。雪の時も同じです。普段雪の降らない関東や関西平野部で雪が降ると、とたんに生産が滞るケースが発生します。

リスクに備える在庫は、「作り過ぎの無駄」とは違うと思うのですがねぇ。
人間関係に置き換えて考えてみますよ。
毎晩、晩酌にビール1本を嗜む家庭があるとします。その家庭は、毎晩1本づつビールを買いに行きますか?
また、お客様が来たとき、お客様に「今日は何本飲みますか?」と聞いて、その分だけ買ってきますか?
ナンセンスです、家庭崩壊につながりますよ。

東日本大震災の時は、震災で生産拠点が壊滅状態にある部品メーカーに、納品を求めた大企業があったそうです。ニュースでは、被災地がどのような状況にあったのかがさんざん報道されていたのにもかかわらず...

時として、大企業は中小零細企業に無理を押し付けてきます。
ジャスト・イン・タイムは、下から上へと流れる仕組みです。取引停止怖さに、下にいる企業は、上に従うしかありません。
大企業は、ジャスト・イン・タイムを当たり前と思っています。そう思いこんでしまうのは、危険ではありませんか?

建物(大企業)が頑丈でも、地盤(中小零細企業)は軟弱になりつつあります。
ちょっとした地震でも倒壊...、どころか実際に震災の時にはひどい目にあっているはずなのですがね...

 

私が視察した現場の例。大企業のジャスト・イン・タイムを支えるために、下請け/孫請け企業は、大量の在庫を抱え奮戦している。
私が視察した現場の例。大企業のジャスト・イン・タイムを支えるために、下請け/孫請け企業は、大量の在庫を抱え奮戦している。

大企業は、ジャスト・イン・タイムで在庫を最小化していますが、そのあおりで中小零細メーカーは大量の在庫を抱え、管理の負担も増すばかりです。在庫の無駄、工数の無駄、輸送費のアップ、不良品の発生など、実際に倒産した企業もありますが、大企業はこの実態は知らないし、倒産の原因は倒産企業自身の経営責任としています。

本当にそうなんですか?
私は違うと思いますがね。

 

ジャスト・イン・タイムというのは、調達も含め...つまり大企業の生産を支える中小零細メーカーも含め、生産現場の「ムダ・ムラ・ムリ」を徹底的に最適化していくべきものです。

「いやいや、うちはそんな苦労を下請けに強いてはいませんよ」

 

そうおっしゃるのであれば、下請け、孫請け・・・の貴社を支える中小零細企業をぜひ視察してみてはいかがでしょうか...

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