指導された側から、4Sの大切さを振り返る

 品質・データ管理部の岡谷です。
 私が「4S」(整理・整頓・清掃・清潔)を学んだのは、もう15年以上前のことになります。私に4Sを指導してくださったのは、本サイトで「勉さんのちょっといい話」を連載してくださり、また当社のコンサルタントとして指導していただいていた鈴木勉先生です。

 今回は、ちょっと昔話に付き合ってください。
 4Sを指導され、そして実践してきた立場から、4Sについて振り返ってみましょう。

「なぜなぜ?」にイラついた思い出

 気泡緩衝材エアセルマットの原反は、紙管を軸にして巻き付けていきます。この紙管、長さは1200mm、直径は80mm弱で、決して小さいものではありません。

 「なぜ、これ(紙管)はここに置いてあるのですか?」

 鈴木先生から指導を受け始めてすぐ、鈴木先生とともに工場を視察したときのことです。当時は、工場内の製造設備近くに、文字通り山のように大量の紙管を置いていました。

 「エアセルマットを作ったそばから巻き付けていくので、すぐに手に取りやすい製造設備のそばに置いています」と私は答えました。すると、鈴木先生はたたみかけるように質問をしてきます。

 「こんなに大量に必要なのですか?」
 「本当にここに置く必要があるのですか?」
 「ここに置いていて、作業の邪魔にならないのですか?」

 当時の私は、「部外者が現場の事情も知らずに何を言っているんだか...」とちょっとイラつきながら、「これだけ必要だから、ここに置いているんです」と答えました。

私たちに欠けていた、「時間の概念」

 これって、トヨタ生産方式におけるテクニックのひとつ、なぜなぜ分析ですよね。

 なぜなぜ分析とは、ある課題に対し、「なぜ?」を何度も問うことによって、その課題の原因を深掘りしていく手法です。

 言い訳になりますが、その時、既に私たちは、鈴木先生から座学で4Sに関するレクチャーを受けていました。

 

  • 整理
    必要なもの、不要なものを分け、不用品は廃棄処分する。

  • 整頓
    使いやすいように、整えて配置、収納しておく。

  • 清掃
    傷やほこり、汚れなどがないように、きれいにする。

  • 清潔
    きれいな状態を維持管理する。

 

 私たちは、4Sのレクチャーを受け、頭では分かっていたつもりでした。
 ですが、現場で課題を指摘されると、本能的に先生の言葉を否定するような心理が働いていたのです。

 私がハッと気がついたのは、「では、紙管は1時間に何本使いますか?」と問われたときでした。
 そう、私たちの考える「必要である」という固定観念には、時間の概念が抜けていたのです。

 当時、製造設備に置いてあった紙管は、2~3時間分...、いやもっと多かったかもしれません。私たちの中には、鈴木先生が指摘された「こんなに大量の紙管を、しかも製造設備のそばに置いておく必要はなくて、1時間分だけあれば十分足りるのではありませんか?」という発想であり、判断はなかったのです。
 紙管の在庫は、基本工場内の倉庫スペースに保管し、1時間の原反製造に必要な本数だけを製造設備のそばに在庫しておく...。
 言ってみれば、トヨタ生産方式で言うところのジャストインタイムを、工場内で行う形です。私たちは、鈴木先生の指導をトライしてみることにしました。

 「製造設備そばに在庫するのは、1時間分の紙管だけ」を実践してみるも、最初は私を含め、皆が半信半疑です。予備の紙管をいつでも取り出せる位置に置き、かつ私自身も何か問題が発生してもすぐに対応できるようにそばに控え、トライを開始しました。

 結果はご想像のとおりです。
 1時間分の紙管があれば、問題なくエアセルマット原反の製造はできました。今考えれば当たり前なのですが、鈴木先生の指導を受けるまでは、固定観念に凝り固まっていた私たちには、当たり前のことが当たり前ではなかったのです。 

4Sの本質とは

 「紙管って、製造設備のそばに大量に置いておかなくても大丈夫なんだね」、気が付いた私たちは、その後も1時間分の必要量だけを置くトライを続けました。すると変わってきたんですね、工場内の景色が。

 今までは山のように積み上げられていた紙管がなるなると、現場の見通しが良くなりました。もちろん、見た目の問題だけではなく、工場内の作業性も、そして安全性も向上しました。
 すると、今まで紙管を置いていたラックがじゃまになってきました。そこで、1時間分の紙管を収納できる分だけ残し、他のラックは撤去しました。すると、ますます現場の見通しが良くなりました。

 「現場は、モノが少なければ少ないほど良い」、これは鈴木先生が常日頃おっしゃっていたことです。
 例えば、ラックがあれば、ついそこにモノを置いてしまいます。それは工具かもしれませんし、テープかもしれませんし、マニュアルなどの紙書類かもしれません。モノは増えることはあっても減ることはありません。人って、そういうものですよ。
 だからこそ、モノが置きたくても置けないように、ラックは撤去してしまえばいいのです。そうすれば、ラックに置かれたモノを管理したり、整理整頓する手間も省けます。

 これ(4S)って、仕事の進め方にも通用します。

 「上司に言われたから」
 「以前からこういう仕事のやり方をしていたから」

 そうではなくて、「本当に必要な仕事とは何か?」を考えることも、4Sだとご指導いただきました。

 少しでもムダを省けば、仕事がスムーズに進むようになります。
 仕事がスムーズに進めば、時間の短縮につながります。
 すると、短縮できた時間を用いて、さらに効率的に仕事を進めることができます。

 「一歩でも歩く距離を短くする」「1秒でも作業時間を短くする」、そのためには何をすれば良いのか、常に考えないといけないよ、と鈴木先生にはよく言われたものです。

 まだまだ私も4Sができていないことがたくさんありますが、今後も精進していきたいと考えています。



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