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2S、4S、皆さま、実践されていますか?
当ブログの『勉さんのちょっといい話』をご購読いただいている読者の皆さまは、2Sや4Sは、ご存知かと存じます。
2Sは、「整理」「整頓」の頭文字を取ったもの。
4Sは、2Sに、「清掃」「清潔」を加えたもの。
さらに、言えば...
こんなバリエーションもあります。ただし、いずれも、職場環境を健全に維持することを目指す標語ですね。
実は、経営学でも「7S」があります。経営学における「7S」は、企業や組織に対する分析手法なのですが。
今回は、少し趣向を変えて、経営学における「7S」を解説しましょう。
※記事中の図表は、すべてクリックで拡大します。
企業のチカラというのは、一部分だけを診ても分からないものです。
企業のチカラとは、ビジョンや戦略、製品・サービスのチカラなど、企業が備えている総合力を指すものなのですから。
「7S」は、経営学のキーワードであり、会社や組織を分析するための手法のひとつです。経営コンサルタント大手のマッキンゼー・アンド・カンパニーが開発した手法で、「S」を頭文字に持つ、7つの経営資源(要素)に分けて、分析を行います。
7つの「S」は、お互いに影響を及ぼします。企業が競争力を発揮するためには、7Sをバランスよく備えることが必要とされています。
7Sは、「ハードのS」3つと、「ソフトのS」4つに分類されます。
「組織構造 (Structure)」
企業における組織構造であり、事業遂行を最適化できる組織構造になっていることが求められます。
「システム (System)」
いわゆるITシステムのことではなく、広い意味での「システム(仕組み)」のこと。人事制度や給与制度、評価制度など、会社が備える仕組みが、事業遂行を加速できる仕組みになっていることが求めらます。
「戦略 (Strategy)」
企業が掲げる戦略であり、事業を推進するために適切な戦略を取っていることが求められます。
「スキル (Skill)」
社員の能力はもちろん、企業の能力も含みます。製造、品質管理、販売、マーケティング、製品力など、ありとあらゆる企業内の能力について、充実していることが求められます。
「人材 (Staff)」
社内における各部門、各職種の特性に基づき、社員たちを適材適所に配置しているか。適正な人数配置になっているのか?、教育手法は適切か?、リーダーシップの適正な活用ができているのか?、など、多角的な観点からの分析が必要となります。
「スタイル (Style)」
経営スタイル、企業文化、社内慣行などが、健全で、社員の能力を引出すものになっていることが求められます。
「共有価値 (Shared value)」
経営理念や社風、価値観などが、社員一人ひとりに理解され浸透していることが求められます。
「ハードのS」は、経営者が比較的コントロールしやすいものの、「ソフトのS」は、変えにくく、また変えようとすると、ある程度の期間を必要とすると言われています。
「ソフトのS」は、企業を構成する社員一人ひとりの意識改革が必要だからです。
7Sは、会社や組織の問題点を洗い出す分析手法であり、企業の強み、弱みを明らかにします。
ただし、気をつけて欲しいのは、7Sの各要素は、お互いに影響しあっていることです。
例えば7Sによって、従業員の能力としての、「スキル」に弱みが発見されたとします。しかし、「スキル」を強化しようとすれば、人事制度や評価制度(システム)の見直しが必要になりますし、「人材」を見直し、従業員たちの能力成長を促す、組織体制や教育手法の改善もしなければならないかもしれません。
「組織構造」や「スタイル」にも、影響は出るでしょうね。
いくら優れた戦略を持った企業であっても、スキルを備えた人材が乏しければ、マーケットで勝ち続けることは叶いません。
逆に、優秀な人材を揃えた会社でも、企業構造やシステムがあやふやな企業は、うまく結果を出すことが難しいでしょう。
優れた企業は、7Sの調和が取れています。
しかし、だからと言って、優れた企業の7Sを、猿真似したところでダメです。だって、企業にはそれぞれ個性があるのですから...
ただ真似るのではなく、その企業にあった7Sのバランスを、長い時間と力、そして知恵を尽くして創り出していかなければならないのです。
小難しい言い方をしましたが...、当たり前のことですよね。
7Sが注目されたのは、1970年~80年代における日本企業の世界的な躍進であったと言われます。
科学的かつ合理的なマネジメントを行ってきた欧米企業には、日本企業の躍進が理解できなかったのです。
マッキンゼーが編み出した7Sは、日本企業の強さを明らかにしました。
日本企業におけるハードのS、つまり組織構造や戦略、そしてシステムはあいまいでしたが、ソフトのSに関して、日本企業は欧米企業よりも秀でていたのです。
ソフトのS、とりわけ共通価値の重要性を示したのが、HONDAでした。
HONDAは1959年に、バイク販売でアメリカのマーケットに進出、後に成功を収めます。勢いに乗ったHONDAは、1970年、アメリカでの自動車販売も開始します。
HONDAは、アメリカでの現地生産を成功させるため、「HONDA WAY」という共通の価値観をまとめました。創業者の本田宗一郎氏らが生み出した、HONDAの持つ企業哲学や生産理念を、アメリカ人に理解してもらうために、「HONDA WAY」は必要不可欠だったのです。
「HONDA WAY」の構築には、1年掛かったと言います。しかしその甲斐もあり、HONDAを遥かに凌ぐ企業規模(当時)であった、フォード、GM、クライスラーら、アメリカの自動車メーカーを相手に、HONDAはアメリカのマーケットで勝ち抜いていくことができたのです。
SFAとは、「Sales Force Automation」の頭文字をとったものであり、営業支援システムと日本語訳されます。セールスフォース・ドットコムが、SFAのリーディングカンパニーとして、よく知られていますね、
営業という職務は、当人が持つ根性や、生まれ備わったセンスを土壌とし、営業を続けることで培われる勘や経験を加えていくことで、優秀な営業マンへと育っていくという考え方があります。
SFAは、そういった旧来の考え方を否定し、科学的アプローチによって、営業活動を標準化しようという試みです。
SFAでは、顧客情報や、商談報告・進捗など、営業活動に関する情報をデータとしてシステムに入力していきます。システムは、インプットされた情報を分析し、営業マンに対し、案件獲得に向け、最適なアクションを指南します。
7Sで言えば、SFAは「ハードのS」に分類されるものです。
ハードのSは、仕組みで勝つためのもの。しかし、本来は「ソフトのS」における各要素の健全な成長も促すものでなければならないはずです。
「うちの会社さぁ、SFAを導入したら、営業マンが弱くなっちゃって...」
某巨大IT企業の方に聞いた言葉です。
この手の話は、SFAに関して、時々聞かれる愚痴ですが...
確かに、SFAというのは、営業マンが日常的に行うべき「考えるプロセス」、もっと言えば「切磋琢磨するプロセス」の一部を代替するのかもしれません。
その結果、SFAは、営業マンの「スキル」を育成する機会を失なわせる、という考え方...、というか勘違いも起きるのかもしれません。
でもこれって、マネジメントの能力不足を、SFAのせいにしているだけではないでしょうか?
だって、SFAが登場する前は、SFAがやっていたことを営業部長や課長といった、マネージャーが行っていたわけですよね?
SFAが営業プロセスの底上げをしてくれるのであれば、マネジメントの品質もアップしなければなりません。
例えば、SFAはクライアントへの提案内容を教えてくれるわけではありません。その時期・タイミングをアドバイスしてくれるだけです。
だったら、マーケティング能力、分析能力などを磨き、企画提案内容をレベルアップさせなければ、結局成果はプラスマイナス指し引きゼロになる可能性があります。
SFAに限らず、システムの導入や、業務改善、生産性の向上は、企業内で働く従業員をサボらせるためのものではありません。勘違いしている人も多いのですけれども。
業務の底上げをすることで、それまで手間がかかっていた業務から人を開放し、より創造的で価値のある業務に集中させるために、システム導入や業務改善があるのです。
SFAによって、これまでの営業活動が楽になるのであれば、営業マンも、彼ら彼女らを率いるマネージャーの皆さまも、これまでとは違うところで頭を絞り、自らを成長させる努力をしなければ、ダメですよ。
この状況を、7Sで分析しましょう。
「共有価値」を除いた、7Sの要素6つをレーダーチャートにした概念図です。
SFA導入によって、「システム」と「スタイル」は向上しましたが、SFAによってもたらされた、言わば「進化した営業スタイル」に適応することをなまけたため、営業部における「スキル」も「人材」も下がってしまいました。
「共有価値」を除いた、7Sの要素6つをレーダーチャートにした概念図です。
SFA導入によって、「システム」と「スタイル」が向上したのであれば、これまでと同じことをやっていては、ダメですよね。
例えば、SFAによって、営業進捗は常に社内で情報公開されているので、営業会議に進捗確認は不要(少なくとも、重要な要素ではない)になりました。したがって、営業会議は、「○○君担当のクライアント:A社に最適な企画提案は何か?」と言った、営業部員同士が、お互いの知恵をぶつけ合う、創造的な場となるべきです。
「進化した営業スタイル」に伴う施策を実行し、営業部における「スキル」「人材」も向上させたイメージです。
ただし...
上図の状態では、「組織構造」「戦略」が変わっておらず、7Sとしてはバランスを欠いています。企業戦略の変更(提案型営業への転換)や、組織体制の変更(マーケティング部と営業部を合体させるなど)など、バランスの良い7Sを目指さなければなりません。
業務改善・業務改革などを行う際、意外と見落としがちなのが、部分最適化と全体最適化です。
「通勤費、営業交通費の精算システムを見直したら、就業規則との矛盾が発覚した」
「生産管理システムを導入したのは良いけれども、出荷管理システムとの連携が考えていなかったため、かえって手間がかかるようになってしまった」
ある業務だけを切り出して最適化を目指したものの(部分最適化)、企業内の業務全体を最適化(全体最適化)を考えると、むしろ悪影響になってしまうケースは、残念ながらときどき見受けられます。
業務改善・業務改革は、企業全体のバランスを診ながら進めなくてはなりません。そういったときにも役に立つのが、7Sなのです。
皆さまも、試しに自分の会社の7Sを分析してみたらいかがでしょうか?
これまで気が付かなかった課題、もやもやとしながらも、うまく把握できなかった課題が、浮き彫りになるかもしれませんよ。