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和泉通信では、脱プラストロー問題や、プラ新法など、プラスチック製品と環境の問題について、いくつも記事をお届けしてきました。
「ところで、和泉は何かやっているの?」──当然、そう思っていた読者の方もいらっしゃるでしょう。
今回は、和泉の気泡緩衝材エアセルマットを、海津化学ゴムさん(岐阜県海津市)とともにパイプへとリサイクルする取り組みについて、ご紹介しましょう。
前回お届けした「業界必見!、プラ新法(プラスチック資源循環促進法)をやさしく解説」でご紹介したとおり、プラ新法では、「3R+Renewable」の掛け声のもと、以下6つの中間目標(マイルストーン)を掲げています。
プラスチックを材料とする気泡緩衝材エアセルマットを製造するメーカーとしては、どれも非常に悩ましいです。
気泡緩衝材は、製造工程や製品そのものの特質から、どうしても製品としての販売には適さない端材や不適合品(気泡の膨らみが十分ではないもの)などが生じます。
こういったものは、和泉でも再度融解し、気泡緩衝材エアセルマットの原料として再生利用しています。しかし、再利用の回数や、再利用品を混入させる割合については限界があります。
品質、すなわち製品の強度や透明度などの美観性にこだわりを持つ気泡緩衝材エアセルマットにおいて、再利用品の多用は、和泉の考えるレベルの品質維持にはマイナスになるからです。
致し方なく、和泉でも端材や不適合品は廃棄処分をしていました。
これは環境保護やリサイクルの精神には反します。加えて厄介なのは、廃棄処分をするためのコストが発生することです。
そんな和泉に対し、可能性を開いてくれたのがくれたのが、海津化学ゴムさんでした。
海津化学ゴムさんは、プラスチックをリサイクルし、パイプや再生プラスチックの原料となるペレットなどを製造する会社です。
海津化学ゴムさんは、自社トラックで、和泉春日井工場まで端材・不適合品の気泡緩衝材エアセルマットを回収し、有価で買い取ってくれます。
これまで処分料を支払っていたごみが、逆に買い取ってもらえるようになったわけです。これはありがたいですよ。
もっとも、海津化学ゴムさんは、どんな廃棄プラスチックでも買い取るわけではありません。ポイントは、「きちんと分別されていること」です。
「実は、和泉さんからの回収をはじめた14年前は、さまざまなエアセルマットが混ざっていました。エアセルマットを、当社において品質の良いプラスチック・ペレットやパイプへとリサイクルするためには、その原料となるプラスチックの素材や組成まで把握し、適切にコントロールする必要があります」(海津化学ゴム 代表取締役 佐藤尚史さん)
そのことは、和泉にも伝えられました。
「でも、和泉さんは、すぐに対応してくれたんですよ」と、海津化学ゴム 営業課長 伊藤清成さんは当時を振り返ります。
日野市クリーンセンターの訪問レポートでもご紹介したとおり、プラスチックリサイクルの課題は、組成どころか、種類すら異なるプラスチックが、「プラスチックだから」という一括りでまとめてリサイクルに回される点にあります。
結果、乱暴な言い方をすれば、ポリエチレンだろうがポリスチレンだろうが、とにかくひとまとめにして再生可能な用途(例えば、物流用途のパレットなど)じゃないと利用できないという事情がありました。
対して、その種類や組成まではっきりと分かっている廃プラスチック製品であれば、より高品質な製品へとリサイクルすることが可能です。
「『分別がきちんとできるかどうか?』、よりよいリサイクルを行うポイントは、これに尽きます」と、佐藤社長は説明してくれました。
海津化学ゴムさんでペレットへとリサイクルされる廃プラスチックの一例。左はペットボトルのキャップ。右は農業で用いられるトレイ。
では、廃プラスチックがプラスチック製品の原料となるペレットに生まれ変わる工程をご紹介しましょう。
集められた廃プラスチックは、粉砕された後、不純物を取り除かれて洗浄されます。
その後、融解され、液体の状態でフィルタを通過させ、さらに不純物を取り除かれます。
品質の高いリサイクル材料を製造するため、粉砕前に回収スクラップから取り除いた不純物。
なお、これも廃棄されるのではなく、プラスチック固形燃料の材料になります。
不純物を取り除かれた状態。
柔らかく溶かされたプラスチックは、紐状に引き伸ばされながら、水で冷やされていきます。古くからの和泉通信読者の方は、似たような画像を思い出すかもしれません。そう、気泡緩衝材エアセルマットと共同配送されている、こんにゃく(しらたき)の製造工程と似ていますね。
融解したプラスチックは...
水で冷やされます。
こちらは白いもの
その後、細かく裁断され、ペレットへと生まれ変わります。
黒いペレットは、黒い顔料を混ぜたもの。白い(半透明の)ペレットもあります。
気泡緩衝材エアセルマットが、パイプへとリサイクルされる工程もご紹介しましょう。
融解されるのは、他の廃棄プラスチックのリサイクル工程と同じです。
棒の先にある炉では、エアセルマットが融解されています。
エアセルマットが融解された状態。
なお、海津化学ゴムのパイプは、エアセルマットだけではなく、複数の廃プラスチックを原料としています。
融解されたエアセルマットは、今度は筒状に押出し成形されます。
太さの異なるパイプを、海津化学ゴムさんでは製造しています。
パイプは大きなリング状にまとめられ、一定の長さで切り揃えられます。
気泡緩衝材エアセルマットで梱包されている、ある自動車部品については、納入先である自動車メーカーの協力の下、使用済みのエアセルマットを海津化学ゴムさんが回収し、リサイクルする取り組みが始まっています。
こういうのは嬉しいですね。
一方で、すべての使用済み気泡緩衝材エアセルマットをリサイクルすることができるかと言えば、それは不可能でしょう。
その利便性ゆえに、気泡緩衝材は広く使用されています。
例えば、ECでの購入製品の梱包に使われたエアセルマットを、当社が個人宅から回収して回ることは不可能です。
そこまで極端なことを言わずとも、EC購入製品が緩衝封筒に封入され届いたすべて人が、全員紙部分とエアセルマットを分離し、住んでいる市区町村の分別ルールに従い、エアセルマットをプラスチックごみとして廃棄してくれるかと言えば、それも期待はできないでしょう。
プラ新法では、中間目標のひとつとして、「2035年までに使用済みプラスチックを100%リユース・リサイクル」を掲げています。当然、当社もこの中間目標を達成すべく努力してはいますが、「100%リユース・リサイクル」を実現する現実的な方法は見つかっていません。
プラスチックは、私たちの生活に欠かせないものとなりました。
もちろん、「Renewable(リニューアブル)」──製造に使用する資源を再生可能なものやバイオマスプラスチックに置き換える──という考えも必要でしょう。しかし、今あるプラスチック製品を、すべて紙や木製の素材、あるいはバイオマスプラスチックに置き換えることなど、できるわけがありません。また、代替資源が必ずしも「ほんとうの意味での環境貢献」につながらないことは、脱プラストロー問題などでも、和泉通信は申し上げてきました。
「ほんとうの意味での環境貢献」につながりつつ、かつ私たちの生活の質も落とさないこと。本稿でご紹介したような取り組みが広がれば、実現できる可能性も高まることでしょう。
海津化学ゴムさま、取材にご協力いただきありがとうございました!
本記事でご紹介した海津化学ゴムさまとの取り組みは、Webメディア「Merkmal」およびYahoo!ニュースでも紹介されています。
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