2024年のポリエチレン・包装業界を振り返る

 「リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性は引き続き高い。」──これは、日本銀行が年に4回公表する「経済・物価情勢の展望」レポート(2024年10月分)の一文です。

 業界を問わず、2024年は経済の不透明感を感じた企業、あるいは人が多いのではないでしょうか。そして、それは当社の生業であるポリエチレン・包装業界も同様です。

 株式会社和泉の常務取締役 加藤佳久が、2024年を振り返ります。

業界の全体的な動向

 2024年は、あらゆるモノが値上げされました。
 これは、包装業界、あるいはポリエチレン関連業界においても同様です。

 「物流の2024年問題」に伴う物流費の上昇、人件費、あるいは原油価格の上昇に伴って、電力費も値上がりしました。当社でも、労務費・設備費・設備修繕費用といった間接コストと、原材料コスト・副資材コスト・貼り合わせ資材コストなどの直接コストの両方が上がっています。

 やむなく、当社でも気泡緩衝材エアセルマットの価格改定を行いました。これは当社だけの話ではなく、競合他社も含めて同様です。

 「2022年から開始した価格改定以降、緩やかに荷動きが悪くなっています。これは市場全体の話です」(加藤)

「(気泡緩衝材に限らず)兼ねてからの円安状況も相まって、あらゆる包装資材が相次いで価格改定を打ち出し、包装資材業界にとって2024年は、改定に明け暮れた1年であったと思われます」(加藤)

「物流の2024年問題」、環境対策、省人化への取り組み

※注
グラフをクリックすると、詳細なグラフおよびデータソースをまとめたGoogleスプレッドシートに遷移します。

 2024年は、「物流の2024年問題」を筆頭に、これまでになく物流効率化への機運が高まった1年でもありました。

 物流関連2法(物流総合効率化法(物効法)および貨物自動車運送事業法(貨物事業法、あるいはトラック法)の改正が公布され、1運行2時間以内ルール(※1)のように、荷主側に課される物流改善・物流効率化への取り組みも、具体的に挙げられるようになりました。

「『物流の2024年問題』を受けて、倉庫料を含めた物流費の改定申し入れを、当社でも受けています。あわせて、荷下ろし後の指定場所納品対応契約(※2)をしていない配送先は対応不可となりました」(加藤)

※1
1回の運行において発生する荷待ち・荷役等、運転業務以外に発生する時間を、2時間以内に収めなければならないという、新物効法に基づく規定のこと。

※2
配送先において、荷卸場所(棚など)とトラックの駐車場所が、数十メートル離れているケースにおいて、あらかじめその荷役料金などの付帯作業料金を定めた契約のこと。

 

 加藤は、環境対策製品が注目されていることにも言及します。

「業界全体で、環境対策を見据えた、再生・バイオマス・生分解といった機能を備えた製品、あるいはマイクロプラスチック対策、脱プラ対策に対する注目が集まり、市場からのニーズも高まりました。結果、これらに応えるために、多くの製品が上梓されました」(加藤)

 当社でも、日本バイオマスプラスチック協会認証の「バイオマスプラマーク」取得したナノ2エアセルマット(バイオマスプラスチック原料を30%以上添加)を提供しているほか、エアセルマット以外を求められた場合には、ユーザーの使用状況を確認させていただいたうえで、エアセルマット以外の取り扱い製品のご紹介も行っております。

 

 また加藤は、以下の2点も指摘しています。

  • 生産性向上、あるいは省人化への取り組みとして、ロボット導入などの機械化を進めるお客さまも増加していること。
  • お客さま、あるいは加工業者において、事業承継、M&A、あるいは廃業などが進んでいること。

 昨今では、競合他社を含めた業界全体の関係性を、生物学上の食物連鎖になぞらえたビジネス・エコシステムという概念が広がっています。加藤が指摘した変化は、ビジネス・エコシスエテムのメンバーや関係性・順位の再構築を促していく可能性があります。

和泉の2024年

 2024年もさまざまな出来事がありました。

 1月1日には、能登半島地震が発生。能登半島はさらに9月の豪雨でも大きな被害を受けました。

 能登半島地震では、当社の取引先さまの中で被災された仕入先さまがいらっしゃいました。
 当社は、あらかじめ意向を確認したうえで、防寒用としてエアセルマットを提供しています。

 

 経済面でも、2024年はマイルストーンとして記録される年になりました。

 2月15日には、名目GDPがドイツに抜かれ、日本は世界4位に転落しました。にも関わらず、同月22日には日経平均株価がバブル期を超え、最高値を記録するという、ちぐはぐな状況も発生しています。

 VUCAの時代※3と呼ばれるとおり、現代は、とても先を見通すことが難しい状況にあります。
 そんな今、和泉はどのような方向性を目指すのでしょうか。

「昨今は、工数や人件費の削減を目的として、包装仕様の見直しを実施されるお客さまも増えつつあります。だからこそ、私どもはお客さまのニーズを的確に捉え、付加価値のある商品を提案することに商機を見出しています」(加藤)

 2025年も、和泉は皆さまに最適な梱包・包装資材を提供できるよう、努力してまいります。
 2025年も、よろしくお願い申し上げます。

 

※3 VUCAの時代
VUCA(ブーカ)とは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取ったビジネス用語のこと。
 経済や政治など、ありとあらゆるものが刻一刻と変化し(Volatility)、複雑なカオスと化している(Complexity)今の時代において、これまでの事例や知見が参考にならないような想定外の事象(Uncertainty)が次々と発生していることから、将来が予測困難な状態(Ambiguity)にあることを意味する言葉。



▲ページトップに戻る